2025.10.18
借金の管理 【弁護士コラム】借金は減らしたい、でも破産はしたくない…「小規模個人再生」が住宅ローンを抱える方をサポートします
借金の返済が苦しくなってきたけれど、「自己破産だけは避けたい」「マイホームを手放したくない」と強く願う方は少なくありません。
借金が多額になり、毎月の返済額を抑えたいという切実なご要望と、自己破産への抵抗感。その両方に応えることができる債務整理手続きが**「小規模個人再生」**です。
小規模個人再生とは?
小規模個人再生は、裁判所の認可を得て、借金(債務)の総額を大幅に減額(例えば、5分の1や100万円までなど、法律の基準によります)してもらい、残りの金額を原則として3年間(最長5年間)で分割して返済していく手続きです。
自己破産のように借金全額の免除(免責)を目指すものではありませんが、その代わりに大きなメリットがあります。
住宅ローンを抱えている方に特におすすめする理由
小規模個人再生の最大の特長の一つが、**「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」**です。
通常、債務整理を行うと、住宅ローンも整理の対象となり、担保となっているご自宅は手放さざるを得なくなるケースがほとんどです。
しかし、この特則を利用すれば、住宅ローンはそのまま(あるいは返済計画を見直して)返済を続けながら、住宅ローン以外の借金(カードローン、キャッシング、消費者金融からの借入など)だけを大幅に減額することが可能になります。
つまり、「マイホームを守りながら、生活再建に必要なレベルまで借金負担を軽減する」という、多くの方が望む形を実現できる可能性があるのです。
こんな方にご検討いただいています(具体例)
どのような方が小規模個人再生を利用されているのか、具体的なケースをご紹介します。
Aさんのケース(4人家族・住宅ローンと他のローンが重複)
- ご状況: 4人家族。住宅ローン(4000万円、0.7%変動金利・35年)に加え、カーローン(300万円)、クレジットカードのリボ払いやショッピング(300万円)の返済が家計を圧迫している。
- お悩み: 「車が無いと生活が不便な地域だが、カーローンも整理対象になる。でもマイホームは守りたい」
- ご提案: 住宅ローン特則を利用し、住宅ローンはそのまま(月々の返済を継続)とします。 整理対象となるのは、カーローン300万円とクレジットカード300万円の合計600万円です。法律上の基準(500万円超1500万円以下の債務は5分の1)に基づき、この600万円が120万円に圧縮される可能性があります。 これを原則3年間(36回)で返済する場合、月々の返済額は約3万4千円(120万円÷36ヶ月≒33,334円)となります。 (※これとは別に、住宅ローンの返済は従来通り続けます) カーローンは整理対象となるため車は手放すことになりますが、カーシェアリングの利用や、将来家計が安定した後に現金で中古車を購入するなどの方法が検討できます。
Bさんのケース(夫婦2人・将来のための生活再建)
- ご状況: 夫婦2人暮らし。将来的に子どもが欲しいと考えている。
- お悩み: 「夫婦それぞれのショッピングやキャッシングのローンが合計300万円ある。子どもを迎える前に借金を整理して、家計を安定させたい」
- ご提案: 整理対象となる債務は300万円です。法律上の基準(100万円超500万円以下の債務は100万円)に基づき、この300万円が100万円に圧縮される可能性があります。 これを原則3年間(36回)で返済する場合、月々の返済額は約2万8千円(100万円÷36ヶ月≒27,778円)となります。 これにより毎月の返済負担を軽減し、将来の出産や子育てに向けた家計の基盤を整えることができます。
Cさんのケース(子どもが成人・退職金が近い)
- ご状況: 子どもが成人し、現在は夫婦2人暮らし。退職まであと8年。
- お悩み: 「子どもの学費などを工面するうちに、いつの間にか借金が500万円に増えてしまった。もうすぐ退職金が出る見込みだが、個人再生はできるのか?」
- ご提案: 整理対象となる債務は500万円です。法律上の基準に基づき、この500万円が100万円に圧縮される可能性があります。 これを原則3年間(36回)で返済する場合、月々の返済額は約2万8千円(100万円÷36ヶ月≒27,778円)となります。
- (清算価値保証原則)
- ただし、個人再生には「清算価値保証原則」というルールがあります。これは、「もし破産した場合に手放さなければならない財産の総額(清算価値)よりは多く返済しなければならない」というものです。 退職金も財産として評価されますが、在職中の方の場合、裁判所の運用では、退職金見込額の「8分の1」を財産価値として計算する(※)ことが一般的です。そのため、退職金見込み額が一定額あっても、この原則の範囲内(清算価値が、減額後の最低弁済額である100万円を上回らない)であれば、個人再生を利用して老後の生活を守る準備をすることが可能です。 (※この評価割合は、裁判所の運用により4分の1となる場合など、地域や状況によって異なる場合があります)
自己破産への抵抗がある方へ
自己破産をすると、一定期間特定の職業に就けなくなる(資格制限)といったデメリットがありますが、個人再生にはそのような資格制限は基本的にありません。
「破産」という言葉の響きに強い抵抗を感じる方や、仕事上の理由で破産を選択できない方にとっても、小規模個人再生は現実的かつ有効な選択肢となります。
借金の問題は、返済が苦しいと感じ始めたら、できるだけ早く専門家にご相談いただくことが解決への近道です。当事務所では、ご状況を丁寧にお伺いし、自己破産、任意整理、そして小規模個人再生など、どの方法が最適かを一緒に検討させていただきます。
まずはお気軽にご相談ください。