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【中学生でもわかる】競売で家を追い出される!?「引渡命令」のスピードと対策
「家のローンが払えなくなって、競売(けいばい)にかけられてしまった…」 そんな時、最後にやってくる最も恐ろしい手続きが**「引渡命令(ひきわたしめいれい)」**です。
名前からして怖そうですが、実際どのような手続きなのでしょうか? 今回は、中学生のケンくんと一緒に、弁護士の伊藤 拓先生にわかりやすく教えてもらいましょう。
ケンくん: 伊藤先生、ニュースで「競売」って聞いたんですけど、家が売れちゃったら、住んでいる人はどうなるんですか?
伊藤先生: いい質問だね。競売で新しい持ち主(買受人)が決まって代金を納付すると、家の所有権はその人のものになるんだ。でも、元の持ち主が「出て行きたくない!」と居座ってしまうことがある。 そこで、新しい持ち主が裁判所に申し立てて、「すぐに家を明け渡しなさい」という命令を出してもらうことができるんだ。これが引渡命令だよ 。
ケンくん: 裁判所からの命令なんですね。無視したらどうなるの?
伊藤先生: 無視して住み続けると、**強制執行(きょうせいしっこう)**と言って、家具や荷物を強制的に運び出されて、鍵も変えられてしまうんだ 。
ケンくん: でも、裁判って時間がかかるイメージがあります。「まだ引っ越し先が決まってないから待って」って言えば、待ってくれるんじゃないですか?
伊藤先生: そこが一番の注意点なんだ。普通の裁判(明渡訴訟)なら、「病気のおばあちゃんがいるから」とか事情を話して、少し待ってもらう話し合いができることもある。 でも、引渡命令は「簡易・迅速(かんい・じんそく)」が目的の特別な手続きなんだ 。
ケンくん: 簡易・迅速…つまり、めちゃくちゃ早いってこと?
伊藤先生: その通り。基本的には書類審査だけで決まるから、わざわざ裁判所に行って言い分を聞いてもらう機会が少ないんだ 。 新しい持ち主がお金を払った翌日から申し立てができて、認められればすぐに命令が出る。「次の家が決まるまで数ヶ月待って」というような時間の猶予(ゆうよ)は、基本的にはもらえないと思ったほうがいいよ。
ケンくん: ええっ!そんなすぐに追い出されるの!? 何か対抗する方法はないんですか?
伊藤先生: **「執行抗告(しっこうこうこく)」**という不服申立ての手続きがあるよ 。 「この引渡命令はおかしい!」と裁判所に文句を言う手続きだね。これをすれば、結果が出るまでは強制執行をストップできる可能性がある 。
ケンくん: じゃあ、とりあえずそれをやれば安心ですね!
伊藤先生: うーん、そう甘くはないんだ。 まず、この申し立てができる期間は、引渡命令が届いてからたったの「1週間」しかない 。 それに、ただ「引っ越し先がない」という理由だけでは、この抗告は認められないことが多いんだ。「そもそも競売の手続きが間違っていた」とか、よほどの法的な理由が必要なんだよ。
ケンくん: 引渡命令って、ものすごく厳しい「強制退去の特急券」みたいなものなんですね…。
伊藤先生: そういうことだね。だからこそ、競売になりそうだと思ったら、引渡命令が出る前に、早めに弁護士に相談することが大切なんだ。 一度命令が出てしまうと、打てる手は限られてしまうからね。
【ポイントまとめ】
引渡命令とは?:競売で家を買った人が、すぐに住めるようにするための裁判所の命令です 。
スピード:通常の裁判より圧倒的に早く、書類審査で進みます 。
猶予はない:事情があっても、「数ヶ月待って」という猶予はなかなかもらえません。
対抗策:1週間以内に「執行抗告」をする必要がありますが、ハードルは高いです 。
もし、競売や立ち退きの通知が届いて不安な方は、手遅れになる前に福岡西法律事務所までご相談ください。
文責:弁護士伊藤拓